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2021-12-08
優しい呉時代の音、最高の演繹―昆曲

一つの言葉で昆曲を説明すると、それは「美しい」という言葉に尽きる。優しい調子と繊細な節回しで、素晴らしい表現力があり、たとえ歌詞が理解できないとしても、心をすませば、その美しさが伝わってくるでしょう。


「百劇の母」―昆曲

昆曲は元代末期(14世紀中頃)に蘇州昆山地方の発祥。当時は「昆山調」と称され、蘇州地方の民間で流行していた歌のことを指していた。明代に、蘇州の昆曲家や学者が変更を加え、昆曲は更に繊細で婉曲的な節回しになり、数多くの聴衆を魅力する完成型となった。その後流行は全国的に広がっていき、戯曲の代表的存在となっていく。

このように、昆曲は明代中頃から清代中頃まで、もっとも影響力のある戯曲となり、現在の中国の戯曲は昆曲に基づいて発展しており、その為昆曲は「百劇の母」と呼ばれるようになった。

 

文学的な脚本

 学者が昆曲の脚本に加わったことで文学性が非常に高くなり、昆曲は唐詩宋詞と元曲の特色を引き継ぎ、長短句のスタイルで、言葉遣いは華やか。その為ある程度中国文学の知識が無いと、昆曲の歌詞を理解することは難しい。

 現在一番有名な昆曲は『牡丹亭』で、その作者は「中国のシェイクスピア」として知られている明代の有名な作者―湯顕祖である。『牡丹亭』は高官の令嬢と文学人との恋愛物語を描いている。この脚本は優美な言葉を活かし、中国封建制度の下で自由恋愛を宣揚する、現代でも偉大な作品の一つである。

 

折子劇

 完全な昆曲を演じるのは非常に難しい為、演出者は原本から一部を取り出して加工を加える工夫をする。例えば、古典的な演繹を聴衆に分かりやすく理解してもらうため、歌に工夫を加えたり、演技の美しさと難易度高めたりしながら、面白いプロットを加えている。このように工夫された昆曲断片は「折子劇」と呼ばれる。

 

「一唱三嘆」の歌い方

 昆曲の歌い方は悠々と柔らかく、わざとリズムを遅くする。これは「水磨調」と呼ばれる。昆曲で使われる楽器は種類が多く、管楽器、弦楽器と打楽器に分けられる。フルートが主楽器で、ほかに笙、簫、三味線、琵琶もある。昆曲の調子は「曲牌」によって分類され、宋詞の詞牌、元曲の曲牌から発展してきた。昆曲では千以上の曲牌がある。

 

歌いと踊りを集大成するパフォーマンス

 昆曲の強い抒情性と繊細な動きは最大の特徴で、歌と踊りが相性よく融合している。

また、呉音を混ぜながら標準語でセリフを言うことも、特徴の一つで、京劇と同じように、昆曲では異なる役には特定の隈取と服装が定まっている。

 

昆曲と生活

 昆曲はとても上品な芸術で、優雅な歌詞と唯美な調子は、昔から中国の学者に愛されている。現代人の生活ペースは速く、疲れもたまりやすい。このような現代生活では、昆曲はストレスを解消させる一つの解決策となる。ある実験によると1分ごとに6080拍子の音楽が最もリラックス効果があるらしい。このリズムは人が落ち着いている状態の心拍数と同じだという。昆曲は緩やかな音楽で人の心を癒やしてくれる。また、『牡丹亭』に描かれているような、純粋で美しい愛情も現代人に必要だろう。